ご家族の方へ

苦しんでいる家族への助言


1. 薬物依存者だけでなく、自分自身のことにも関心をもつこと

 問題を抱えていて助けを必要としているのは、薬を使っている本人だけだと思っておられませんか? もしかしたらそうではないかもしれません。あなたは、自分自身も傷ついたり、疲れ切っていたりしていることを忘れていませんか?我慢したり、気にかけないようにしていませんか?
 あなたは、自分のつらさを声に出してもよいのです。そしてそれを和らげるために、あなた自身のための助けを求めてもよいのです。

2. 薬の使用をやめられるのは、本人だけだという事実を受け入れること

 これは、とても苦しいことかもしれません。しかし薬物依存からの回復は、薬を使わずに生きていくということです。本人以外の人の努力によって、もたらすことができるものではありません。もし、24時間本人に張り付いて薬の使用を阻止し、そのまま一生面倒を見るというなら別ですが。

3. 本人のために、自分を犠牲にするようなことをしないこと

 あなたが苦行を重ねる程に、本人の回復が進むというわけではありません。”本人のために”という大義名分の下になされる努力の多くは、勝ち目のない勝負に賭金をつぎ込むような結果に終わりがちです。これはあなたをひどく落胆させるとともに、本人へのいらだちや怒りを蓄積させます。

4. 本人が薬物依存になったのは、あなたのせいではないことを認識すること

 薬物依存は病気です。ある種の薬物を継続的に使用することによって、依存が生じるのです。あなたに落ち度があったから、本人が薬物依存になったということを裏付ける、医学的な根拠はありません。あなたが自分の落ち度をあれこれ思い浮かべて、それを埋め合わせようと四苦八苦することで、解消される問題ではありません。

5. 薬物問題以外の部分に目を向けて、本人との関係を育てていくこと

 薬物とのつきあいをどうするかについて、あなたが直接的にできることはほとんどありません。しかし、あなたが薬物依存者の家族であるなら、あなただけにできることがあります。それは、薬物依存の人としてでなく、家族として本人をとらえて、関わりをもっていくことです。薬物依存という問題に対して治療や援助という形で関わることができる人は、他にもいます。しかし、家族として本人と向き合えるのは、あなただけなのです。

 最後に付け加えるならば、この家族としてのかかわりに模範例はないということです。家族の中に薬物依存の人がいてもいなくても、「よそはともかく、うちはこう」という、それぞれのおたくの流儀で、本人を含む家族全員が納得し、満足できる暮らしを送れることが大切なのではないでしょうか。どうか「薬物依存の人を抱える家族としての人生」に自らを囲い込まないでください。

◆「薬物依存に立ち向かうためのガイドブック2 そばにいるあなたにできること(山野尚美著、1996、大阪ダルク・大阪ダルク支援センター)」より


薬物依存症とは

1.薬物依存は、病気です

 これまで我が国においては、薬物の使用関連問題については、犯罪という側面ばかりが強調されてきました。しかし、この問題には、薬物依存すなわち病気という側面があるのです。米国精神医学会によって作成されたDSM-IV(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:精神障害の診断統計マニュアル)では、物質関連障害の章に100頁程があてられています。
 では、薬物依存とはどんな病気なのでしょうか。DSM -IVでは、薬物依存の特徴を「有害な結果が予想されるにもかかわらず、薬物の使用をやめることができないことを示すような、認知・行動・生理的な症状」であるとしています。すなわち、本気でやめたいと思っても薬物の使用をやめることができない状態なのです。こうなると、友人や家族との約束を破っても、学校や仕事を休んでも、うそをついても、借金をしてでも、薬を使わずにはいられなくなります。薬物依存が大変な病気であるということの一つには、薬の使用をコントロールできないこと自体よりも、これらのトラブルが当事者自身とその周囲にいる人に与えるダメージが挙げられます。

2.危険なのは、法的規制薬物だけではありません。

 依存を引き起こす性質のある薬物を精神作用物質といいますが、これらの全てが法律で規制されているわけではありません。病院でもらった薬や、薬局で買った薬で依存になる人もいます。一部の睡眠薬や鎮痛剤などがそうです。ちなみに、自動販売機で手軽に買え、派手に宣伝広告されるお酒やたばこも、それぞれアルコール、ニコチンという、れっきとした精神作用物質を含んでいます。合法イコール安全とは言えないのです。

3.薬物依存からの回復とは

 「薬を欲しがって暴れる人をベッドにくくりつけて、しばらくすると、すっかり落ち着いて反省し、二度と薬を使うまいと決心する・・・」映画などでよく見かける描写ですが、これは実際とは違います。薬物依存という病気がなぜ大変かというと、薬を求める気持ちを完全に取り除くことが難しいからです。命が続く間、薬のことを忘れさせておく、または思い出しても使いたいとは全く思わない状態にさせておく手だては、今のところないのです。ひとたび経験した薬物の効果が、記憶から完全に消え去ることはありません。そして、いつまた薬物を使いたい気持ちが湧いてくるのかもわかりません。

 回復は、このような条件下で、薬を使わずに生き抜いていくことです。しかしこれは単に薬を使わなかった日数の記録を延長することではありません。薬物を使わないで、自分が満足できる人生をどう生きていくかということに、大切な意味が含まれているのです。

4.必要なのは、治療・援助です

 薬物依存は、放っておけばそのうち治ってしまうような病気ではありません。当事者のやる気や身近な人の叱咤激励によって改善されるものでもありません。回復に向けては、治療や援助が不可欠です。法的に規制された薬物を使用した人については、現行法下では、しかるべき処罰が下されるのは当然です。しかし、これらの人々についても、依存という病気が確認される場合には、それと同時に必要な治療・援助の機会が確保される必要があるでしょう。
 薬物依存の問題に関しては、オールマイティーな治療・援助のプログラムはあり得ません。今後は、医療、司法の各領域において、公的私的それぞれに特性を生かした取り組みが進められ、回復を目指す人々の選択や組み合わせの幅が広がることが望まれます。

◆「薬物依存に立ち向かうためのガイドブック1 薬物依存とは何か(山野尚美著 1995、大阪ダルク・大阪ダルク支援センター)」より

ご家族の薬物問題でお困りの方へ(厚生労働省)PDF書類